展示会で配布されていた凄いノベルティ
昨年11月に札幌で開催されたビジネスEXPOという展示会で、非常に興味深いノベルティを配布する企業がありました。
札幌市東区の株式会社テックサプライ様が、植物由来の新素材で作られたカトラリー(フォークとスプーン)とストローを配布しておりまして、この新素材は、土に還ることができ、従来の金型による成型(射出成型、シート成型、ブロー成型、押出し成型)ができる新素材です。原材料は、竹(バンブー)、デンプン、植物由来の樹脂とのこと。植物由来であるが故に燃やしても有害物質が一切出ないのは非常に素晴らしいポイントです。
株式会社テックサプライ様はビルメンテがメインの会社ですが、SDGsの一環として竹材のストロー・フォーク・スプーンを会場で配布しているとのことでした。
偶然同じ系統の素材を知っていた
実は偶然にも弊社は2022年前半くらいから、本州のとある企業様からのご依頼で、バンブーによる成型素材素材の調査を行っており、元々日本にバンブーによる成型素材がなかったため、お世話になっている社長の紹介で、台湾でバンブー由来の成型素材で実際に金型による様々な成型を行う会社と打合せを行っておりました。
台湾の工場から、お皿やコップなどのサンプルをもらい、社内で土に埋めたり、落下試験をしてみたりしましたが、非常に丈夫で、食器としても普通に使えますし、土に入れると半年で分解する、非常に環境にやさしい素材でした。
こちらもバンブーとデンプン等でできており、この素材の研究歴史は20年以上あるとのことで、この台湾の工場は材料の販売は行わず、自社で素材を開発し、その素材で様々な成型品を作っている工場です。
上記のことがあり、展示会で日本の企業がバンブー由来の成型品を配布している光景は、自然に目に止まり生産地を聞いてみるとやはり台湾でした。(弊社と打合せをしていた会社とは違う)
しかし、株式会社テックサプライ社長からの情報により、株式会社アミカテラ様が水俣市にバンブーペレット工場を建設中ということを知り、今後は本格的に日本製バンブーペレットが普及し、樹脂に代わる環境に優しい成型素材が多く普及するのではないかと感じました。
ちなみに水俣市で製造されるバンブーペレットの竹は九州産の竹を使うとのこと。素材名は「モドセル」
2022年11月時点ではスプーンやフォーク、食器などは台湾で製造。株式会社テックサプライ様は「モドセル」の代理店もされているとのこと。
半年かけて弊社で実験してみました
株式会社テックサプライ様のご厚意により、モドセルで作られたカトラリーを多めに頂いたので、この「モドセル」が本当に土に還るのか、社内で半年かけて実験を行ってみることにしました。
さすがに冬は雪が降るため、外に埋めた場合どこに埋めたか分からなる可能性があるため、社内の観葉植物の土に埋めました。
ただ埋めるだけでは面白くないので、比較対象として羽田空港のスターバックス内で置かれているカネカ生分解性ポリマー「グリーンプラネット」なるカトラリー(スプーン)を2ヶ月前の2022年9月下旬から埋めているものと比較します。
2022年11月11日からモドセル製フォークを柄の部分を土に埋めておきました。(フォーク先が外に出ている状態)
そして時が経つこと半年、2023年05月11日、モドセルを埋めて半年経過したタイミングで、埋めたモドセル製フォークを取り出そうと、フォークの先端(口に入れる側)の部分を持ち上げたら、土の中の部分と外の部分が完全分離、掘り返すと柄の部分の分解が始めってバラバラになりフヤケている状況でした。
「生分解性」とは
ここで今一度「生分解性」の定義について調べてみました。
「生分解性プラスチック」について、日本バイオプラスチック協会での定義は
出典:日本バイオプラスチック協会
「生分解性ポリマー」については、樹脂プラスチック材料環境協会で定義は
出典:樹脂プラスチック材料環境協会
いずれも勝手に自然界に循環していく素材とはありますが、具体的に土に埋めるとか、半年以内になどの時間的条件の文言はないため、カネカ生分解性ポリマーももしかしたら5年くらい土に埋めたら分解が始まるかもしれませんし、そもそも土じゃなくて別の環境じゃなければ分解が始まらないかもしれないと思い、カネカのWEBサイトを見てみると、土中のみならず海中でも生分解に成功とあります。WEB上の写真では海中での分解過程を88日まで記録したものがありますが、土中のデータがないため具体的にどれくらいの期間で土中で生分解するかは不明でした。そもそも本当に土中で生分解するのか謎のままです。
生分解速度の重要性
しかしながら今回モドセルが非常に環境に優しい成型素材であることが、実際の実験で理解できました。
世の中にはバイオプラスチックや生分解性プラスチック、植物由来プラスチックなど、環境に良いを謳い文句にした樹脂やそれに代替する素材がでてきておりますが、もし「生分解性」を謳うのであれば、一つの基準として半年以内に土や水に還るという基準をクリアしたものだけが、「生分解性」を認められるなど、一定のガイドラインがあると良いのではないかと思いました。
とはいえ、分解環境の水や土の条件パラメータを一定にする難しさを考えるとなかなか基準作りが難しいとも思えます。分解にある程度のスピード感がないと、今話題の海中のマイクロプラスチック及び大気中のマイクロプラスチック問題の解決には程遠い。いつか土に還れば良いではなく、他の動物に害を及ぼさない、人体にも悪影響を及ぼさない素材こそが本当の意味で環境にやさしい素材であると思います。
今回は分解スピードに注目しておりますが、素材の成分についてもまた然りです。素材の成分についてはまた別の機会に。