今回のビジネスブログは、札幌の冬のビッグイベントさっぽろ雪まつり2025の大雪像製作のお話です。
毎年陸上自衛隊の皆さまが製作する芸術的大雪像ですが、今回弊社は3Dを用いてこの大雪像製作に関わるお仕事をさせていただきました。
今回関わったその大雪像は毎年一番注目され、メイン会場といえるであろう4丁目会場の大雪像です。
雪像職人の後継者不足問題
大雪像は会場ごとに製作する組織は違いますが、陸上自衛隊のみなさんが製作されていることは有名です。陸上自衛隊の皆様の巧みな製作技術に支えられてこの大雪像が毎年誕生するのですが、陸上自衛隊内の雪像製作職人の後継者不足と技術伝承の課題が出始めています。このままでは素晴らしい技術を持った雪像職人が年々引退し、現在の技術レベルが保てなくなることを危惧し、それを解決しようと発案してくれたのが、今回のクライアント様です。
技術伝承問題の解決策
従来の雪像製作手法は、事前に1/40スケールの模型(模型幅500mm)を作成し、雪像製作現場に模型を持ち込んで、模型を見ながら雪を削って雪像を作っていく方法になり、正確な投影図面が無い状態で雪像製作を行うため、模型と実際の雪像にズレが生じ、削る部分の寸法がわかりにくい。
自分が削っている場所の座標がわからない状態で削るため、模型とのズレが生じてしまいます。しかしこれまでは陸上自衛隊雪像製作の匠の技、長年の経験と勘で位置決めを行い削り出していくという、まさに神業的な技術に支えられて雪像が製作されていました。
そこで今回、弊社はこの1/40スケール模型を事前に3Dスキャンし、3Dデータをクライアント様にお渡しして、クライアント様で二次元の投影図面を作成して、更に現場の職人がわかりやすいように、図面内を1メートル角に区切ることにより、削る位置がより明確になり、模型と実物のギャップを埋めつつ、若手職人でも作業しやすくなるように、改善を行うという作戦です。
雪像模型3Dスキャン

今年の4丁目会場大雪像は「転生したらスライムだった件」略して「転スラ」です。

大雪像の雪像模型は毎年事前に報道陣に公開されます。公開前日に陸上自衛隊真駒内駐屯地に訪問させていただきまして、本番前のテストスキャンを行わせていただき、スキャン精度を確認し翌日、報道陣に公開後の雪像模型を、札幌市内某所で3Dスキャンしました。
社内での3Dスキャンデータ修正

3Dスキャン時に、スキャンとは別に写真も細かく撮影し、3Dデータと実際の模型との形状ギャップを確認し、形状が細かく出ていない場所については、形状を修正、場合によってはモデリングし、模型の形状に限りなく近づけました。
修正後の3Dデータ

修正後の全体3Dデータです。
完成した二次元図面データ

投影時にパース表示を無効化して、正面、側面、上面の図面を出すことにより雪像内部の部品の位置関係がわかりやすくなりました。(図面提供:クライアント様)
3Dプリント模型


雪像製作現地視察

この日は特別に製作現場内に入らせていただき、建設中の雪像を見せていただきました。
これまで模型から3Dデータを作って、画面の中で何度も見てきた雪像でしたので、その形状が幅20メートルという大きな雪像となって目の前で作られているのが非常に感動的でした。
まだ未完成で感動していますので、完成したらどれだけ感動するか。楽しみです。

会場の片隅に陸上自衛隊製作模型が置かれていました。やはり表面色が淡いグレーの方が形状がきれいに見えますね。来年の改善点とします。
雪像完成後のオープン前日視察

さっぽろ雪まつり開催日前日、完成したての転スラ大雪像を拝見させていただきました。
完成直後が一番良い状態ということで、この状態での大雪像を間近で見れるのはレアです。
会期は8日間ありますが、途中で雪が積もったり、暖冬で溶けたりしますので、一番のベストコンディション状態の雪像を確認!したかったのですが、筆者がたままた海外出張で不在だったため、スキャン担当者に代わりに写真を撮ってきていただきました。
写真で見てもそのディテールの細かさが伝わってきて、模型よりも更に形状が細かくて繊細で、フルスケールだからこそできる形状表現があるのだと改めて勉強になりました。やはり長年雪像製作をしている陸上自衛隊の造形スキルは神業です。
今回さっぽろ雪まつりのメインとなる大雪像製作の一部に関わらせていただき大変光栄でした。
来年も是非よろしくお願いいたします。