タイ様式の神像台座「瑞蓮台」完成

タイ様式の神像台座「瑞蓮台」完成

今回デザインする台座は仏像台座ではなく神台座

今回の台座はいつもの仏像台座ではなく神が鎮座される台座です。 タイで特別な神像を拝領されたクライアント様からのご依頼で、神を鎮座させる一点物台座を新たにデザインします。 タイ由来の神像ですので、台座もタイ様式のデザインを採用して親和性と統一感を意識し新たな台座をイメージしました。

外観基礎デザイン

まずは筐体のおおおまかな形状を決めて、装飾をイチからモデリングしていきます。 タイ様式と日本様式で共通する部品もあり、伝統的な蓮弁や反花は、形状違いで存在しています。 細かな装飾が散りばめられ、全体的に多くの装飾を配するため、装飾のモデリングだけでかなりの時間を要しました。

装飾と筐体本体の合体

以前「巨大水晶用台座制作」でもご説明した通り、装飾のデザインはスカルプト系モデリング3D-CADを使い、台座本体筐体のモデリングはパラメトリック3D-CADを使いつつ、最終的にはパラメトリック3D-CAD上で合体させます。

3Dプリント

台座を上下2分割して、2台の3Dプリンターで造形を行いました。
各2kg合計4kgのレジンを使い、造形範囲をフルに使っているため、非常に重たい造形物となりました。

この重たい造形物を支える造形機のアーム部分の強度が優秀ですが、光造形機のY軸範囲は、このアーム強度に比例し限界があるため、どうしてもY軸範囲が狭くなりがちなのは、SLA方式、DLP方式、MSLA方式で共通の課題です。

造形後の仮組み

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3Dプリント完了後はレジンの洗浄と二次硬化を行います。
洗浄はIPA(イソプロピルアルコール)を使い3段階で行い、二次硬化は水中方式を採用しています。
写真では画像加工で隠しておりますが、造形に必要な形状を各所に入れて、外観不良が起きない工夫が施されているため、実際はここまで完成形に近いものではありません。

平面研磨作業

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樹脂である以上硬化の際には多少の残留応力により、反りや歪が発生するため、平面部分にパテ盛りして研磨を行います。

パテが余計なところに付着しないようにマスキングを施し「プラダクシャナー用お釈迦様台座制作」の回でもご紹介したイサム塗料の2種類のラクーダパテを使ってパテ盛りしていきます。

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研磨を終えて表面にフィラー塗装を施します。表面形状複雑さから研磨ができないことを考慮するとフィラーがベストチョイスです。凹凸を埋める能力がピカイチです。

追加装飾製作

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台座上下を接続するステンレスボルトが8本入るのですが、そのザグリ穴を隠すための装飾を追加で製作しました。
こちらも専用の塗装治具を作ってゴールド塗装を施し、二液硬化式ウレタンクリアを複数回塗りしてツヤツヤに仕上げました。

組み立て

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台座本体上下の塗装が完了し、上下それぞれの面に高級人工皮革であるウルトラスエードを貼り付けた状態です。

複雑に入り組んだ形状に対しての塗装は難易度が高く、スプレーガンの塗料が角度的にどうしても当たらない部分があり、加えて塗装対象物が重たいため、様々な角度に振り回しながらのスプレーガン塗装は非常に苦労しました。

フィラー塗装は1回目の後に研磨できる部分を研磨して平滑化してから仕上げの2回目を行い、ゴールド塗装1発塗りした後、クリア捨て吹きしてからの本吹きでツヤツヤに仕上げています。

クリアはある程度厚塗りしないと、他の面を塗装中に塗装の粉が付着して(弊社塗装ブースの狭さが原因と思われる)外観不良になりますが、厚塗りしすぎると垂れが発生しますので、さじ加減が難しいところです。シンナー比率を低くして粘度を高めつつ垂れを防止しますが、とにかく面構成が多いため、クリア塗装が一番難しいです。

完成

ついに弊社初となるタイ様式の神像用台座が完成しました。

そしてこの台座の名前は「瑞蓮台」という名前に決定しました。
タイ語名:ฐานดอกบัวมงคล (ターン・ドークブア・モンコン)

この名前はAIに完成写真をアップロードして、タイ様式の台座に名前をつけて欲しいと頼んで、5つの候補をいただき選んだ、第1候補名前になります。
AIは写真から台座の特徴を読み取り、台座の特徴を以下のように捉えてくれました。

  • 金色で豪華な装飾(唐草文様と蓮風のレリーフ)
  • 重厚感ある多層構造
  • タイの王宮や寺院に見られる伝統装飾様式
  • 彫刻が精緻で神聖な雰囲気

お客様から実際にご使用いただいているご報告

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お客様からお礼のお言葉とお写真が送付されました。
ガルーダ神が鎮座されております。
左写真ではレンズ効果で下が広く上が狭く見えますが、実際は右写真のように台座底面の幅よりもガルーダ神の広げた羽根の方が広いですので、上下バランスも良いかと思います。

当初はお客様からのご依頼で一点ものの台座を製作予定でしたが、師匠の阿闍梨からこれからタイで特別な神像・仏像を拝領する方々のためにもこの台座を作ってみてはどうか、というアドバイスをいただきましたので、謹んで制作することに決定いたしました。

今後この瑞蓮台により、多くの神々神聖な存在の皆様がより大きなパワーに満ち溢れますように。そして多大なる尊敬の念を込めてお作りいたします。

ご注文いただきましたお客様とご指導いただきました阿闍梨に感謝申し上げます。合掌