今回は3Dの話からちょっと脱線して
今回は3Dプリントの話題ではなく、3Dプリント品に施す塗装の話題です。弊社はあくまでも塗装専門業者ではございませんので、塗装の専門的な知識があるわけではないのですが、仕事の一部で塗装を行う業者として一般的なお話をさせていただきます。
ですので塗装に関する詳しい情報、正確な情報をお求めの方は、塗装を専門に行なっている業者の記事をご参考になっていただければと思います。
具体的な内容としてはクリア塗装のお話です。弊社ではこれまで一液性のクリア塗装を行ってきましたが、2023年夏頃から二液性のクリアを採用しております。一液性クリアと二液性クリアのメリットデメリットをご説明しつつ、実際に見た目にどれくらいの差があるのかを写真でご説明したいと思います。
保管や作業が簡単な一液性クリア
何と言っても一液性のメリットは、作業の利便性ではないでしょうか。まず主剤と硬化剤を計量して混ぜる調合の手間がないので、簡単に塗装作業に入ることができます。ゆえに一液性クリアは硬化剤を混ぜるわけではないので、瓶に入れた状態では何日経過しても固まらず、塗装後に余った塗料があればそのまま瓶に戻して再使用が可能です。つまり使いたい分だけ正確に使うことが可能です。弊社ではこれまで当たり前のように一液性クリアを常用していたのですが、二液性を使うとこの利便性を改めて感じてしまいます。
二液性は塗料が余ったら廃棄するしかない
硬化に時間がかかる一液性と迅速に硬化する二液性
二液性の場合、厚塗りしても温度常温で完全硬化は48時間程度で完了します。
捨て吹き程度の薄塗りであれば10分も経たないうちに触れるレベルに乾きます。厚塗りしても1時間後には、優しく触われるレベルに硬化しています。(爪を立てて押すと潰れます)
一方一液性の場合、厚塗り塗装後数日経過しても若干内部の硬化が甘いです。硬化剤の効果は偉大です。ゆえに、二液性は硬化時間が短いため、重ね塗りの作業がとても短時間で済みます。
艶は圧倒的に二液性が有利
気になるの仕上がり具合ですが、同じ形状の物を一液性と二液性で塗り比べてみました。
写真右:一液性 写真左:二液性
写真だとわかりにくいのですが、肉眼で見るとその艶の差が一目瞭然です。左側の二液性の方が艶があることがわかります。特にR曲面部分の艶がわかりやすいです。
一液性クリア:クレオスGX100 スーパークリアーIII 光沢(アクリル塗料)
二液性クリア:関西ペイントPG80 (ウレタン塗料)主剤10:硬化剤1
使用スプレーガン:明治機械製作所 F-ZERO TYPE B ノズル径φ1.6mm
厚塗り性能も二液性が圧倒的有利
クリア層はある程度の厚みを持たせて艶に深みを出したいと思います。当たり前ですが一回の塗装で厚く塗りすぎると塗料は垂れてしまいます。垂れにくさを評価しても一液性よりも二液性の方が垂れにくい感じがしますが、これはシンナー比率が関係しています、口径0.3mm0.5mm程度のハンドピースで使用するアクリル塗料は主剤に対して同量程度のシンナーで希釈します。それ故どうしても塗料粘度が下がり、垂れやすいという特徴があります。二液性は主剤に対して30%程度(混ぜ方は人それぞれなので30%とは限らない)しか混ぜないため比較的粘度は高めになり、結果垂れにくくなります。
実験をしてわかったのですが、二液性クリアをハンドピースのような口径の小さいエアブラシで使用すると、粘度が高すぎるせいか上手く噴射できません。試しに二液性もシンナー比率100%(主剤+硬化剤と同量)で希釈して噴射してみると、噴射はするのですが、徐々に正常な噴射ができなくなる感じになりました。ハンドピース程度のエアブラシの場合空気圧が小さいことも原因かもしれません。
総括
一液性クリア、二液性クリア双方に長所も短所もありますが、艶を優先するのであれば二液性一択かと思います。小さなものを塗装する際に二液性だと量が多すぎることもありますし、主剤と硬化剤を混ぜる段階で使用する塗料の量を予測しなければなりませんので、ある程度の経験がないと作業中に塗料が不足してしまったり、余ってしまったりすることはあるかと思います。最近は小分けで塗料を販売している業者もあり、わりと小さなものでも二液性のクリアで仕上げを行います。二液性クリアの艶を見るともっと早くに導入しておけば良かったと思ってしまいます。