ABSの吸湿性が及ぼす3Dプリントへの影響

熱溶解積層法3Dプリンターの材料として代表的なのがABS樹脂かと思います。しかしこのABS樹脂はもう一つの代表的樹脂であるPLAと比較して扱いにくく3Dプリントが難しいというのが一般的です。
本日はABSの吸湿性が及ぼす3Dプリントへの影響についてのお話をさせて頂きます。
ABSとは私たち家庭の中に数多く存在している樹脂で、家電製品の筐体などに使用されている樹脂材料です。これら家電製品の筐体部品は射出成形という加工方法で製造されており、簡単に説明すると金型に高温高圧の溶けたABS樹脂を流し込んで成形する方法です。この成形過程で重要なのが予備乾燥です。すなわちABS樹脂内の水分を抜き、より良い成形条件で製品製造を行います。
ではABSに水分が含まれていると成形時に何が起こるでしょうか?シルバーストリークという外観不良がおききたり内部にボイドと呼ばれる真空空間ができたりします。初期状態で0.1%以下の水分量のABS樹脂素材も50時間放置すると内部の水分量は0.3%を超えます。(樹脂メーカーでは0.1%以下の水分量での使用を推奨)3Dプリンターの樹脂材料であるABS樹脂も考え方は全く一緒で、吸水を防止するためにフィラメントメーカーはフィラメントを真空パックにして出荷販売しております。弊社ではABS材料を開封後可能な限り早めに使い切るよう心がけております。早い時で4日、遅くとも1週間程度で使いきらなければ、吸水の影響で3Dプリント時に外観不良、樹脂の乗りが悪いなどのトラブルが発生します。

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写真:真空パック状態の3Dプリンター用フィラメント
弊社は幾度と無くフィラメントを仕入れてきましたが、ごくたまに真空状態が保たれていない不良品が手元に届くことがあります。真空状態が保たれていない=ABSの吸水=3Dプリントトラブルの元です。
射出成形工場のように3Dプリンター所有者が予備乾燥できれば良いのですが、そんな設備があるわけもないです。真空状態が保たれていない不良品は購入店へ返品することを強くオススメ致します。まずABS樹脂フィラメントを購入した際にはしっかり真空状態がキープされているか否かを是非ご確認ください。