日本人が3Dを使わず2Dを好んで使う理由

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日頃弊社は主に製造業向けに3D-CAD導入を推進すべく3D啓蒙活動を色々とやっておりますが、最近では製造業のみならず食品やアパレル、医療分野からの引き合いも多く頂いております。
3D関連業務の需要が増えてはいますが、現在の3D普及率は製造業をだけみてみると約2~3割に過ぎません。ほとんど2Dを使ったものづくりが行われているのが現状です。それと比較して3Dからものづくりを始める海外勢特に中国などは、ものづくりの技術構築速度が著しく速く、昔の日本のそれと比較しても桁違いのスピードで成長していることが見受けられます。
これまで3Dを導入することで得られるメリットや業務の効率化について、本ブログでも書きましたので今回はあえて割愛しますが、なぜ日本のものづくりは今でも2Dが主体なのでしょうか?3Dがなかなか普及していかない理由は何なのでしょうか?今日のブログはそこを考えていきます。

文化と歴史の違い

先日とあるデザイン系の会合で出会ったデザイナーは、数年の海外留学経験があり、海外でデザインを学んでいく過程で、なぜ日本人デザイナーが2Dを好み、海外デザイナーが3Dを好むのか納得できる理由に辿り着いたようです。
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まず中国やヨーロッパには彫刻など無垢の素材から設計図なしに直感で立体物を創造する技術や文化があります。彫刻家や石工などの職人さんの歴史は明らかに海外の方が古く、そこに2D的な図面はほとんど存在しません。設計図は全て職人の頭の中に3Dで存在していたと推測されます。

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一方日本ではものを作る際に必ず絵を描く習慣が存在します。それ以前に絵巻物や古い書物から分かる通り、紙に文字や絵を描く文化が強く、和紙のような世界トップレベルの紙が存在することからも2Dを強く意識した人種であることが見て取れます。そんな人種にいきなり2Dから3Dに移行しようとしても簡単には3Dに変化することはできません。

遺伝的要素・脳の構造と年齢

以上のことからわかる通り、歴史的な文化から見ても日本人に3Dが馴染まれない理由がわかります。3Dと2Dの人種的差異は今に始まった事ではなくずっと古代からのことで、きっと遺伝子レベルで3D向きなのか、または2D的ものの考え方か、が植え付けられているはずです。先天的に不向きな分野をマスターするには、多くの投資や努力が必要となるかもしれませんが、これはしかたのないことなので受け入れるしかありません。

また、弊社の講師歴の中でわかってきた3Dをマスターしやすい人の特徴を2つ挙げるとしたら、
①若ければ若いほど習得が速い
20才前後の学生は授業態度が悪くても3D-CADの習得が早く、極端な話、授業中に寝ていてもデキる子はデキていました。一方40~50歳くらいの授業態度が真面目な学生に同じように教えても習得にはそれなりの時間がかかります。年齢に比例する頭の柔らかさという表現がありますが、まさにその通りです。
②2Dで図面を描いた経験がない人の方が3Dをズムーズに受け入れる
こう書いてしまうと弊害があるのかもしれませんが、長年2Dを扱ってきた人に3D-CADを教えると、変な癖があります。「順番的にこうしなければならない」「三面図的な考え方」など先入観や固定概念が多すぎるのです。3Dは修正も簡単なので順序や三面図の整合性など皆無なのです。デザインや設計をゼロから始める人の方が3D向きであり、3Dだからこそ素人でもわかりやすく始めやすいです。

つまり世代交代の新陳代謝が促進していかない限りはなかなか3Dの文化は根付いていかないのかもしれません。
弊社の代表田村も会社員時代に3Dと2Dの狭間で苦しんだ人の1人です。自分がいくら3Dを使えても周りが2Dであれば全く意味がありません。

では変えていくにはどうする?

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現在2Dを使用している企業、2Dを使用しているエンジニアにいきなり3D化して下さい!と言ってもうまくいく訳がありません。これは短いスパンで考えることではなく長期的な視点で考えることが重要です。
具体的に言えばこれからの日本の将来を担う子どもたちへの教育が大きな要です。日本の教育(特にものづくり)における3Dの導入率はまだまだ低く、現在の浸透ペースのままでは国際競争力的な観点から見ても危機的状況です。
地方自治体、行政などが次世代のものづくりに着目し、子供の教育などに3Dを導入し、10年後20年後の日本のものづくりを設計することが肝要であると考えます。。
ダーウィンの名言に「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるでもない。唯一生き残るのは、変化できる者である」とうものがあります。まさに時代の変化や、次世代のものづくりに変化・対応できる人・企業こそが今後生き残れるのではないでしょうか。